定款認証後の取締役変更??

設立時取締役について

会社設立時に選任された取締役と代表取締役のことを“設立時取締役”、“設立時代表取締役”といいます。

この“設立時取締役”、“設立時代表取締役”は会社法で選定方法が定められており、

『定款で定める』か『発起人会で議決権の過半数による賛成』をもって選定する決まりになっています。

そして選ばれた方は就任承諾をもって“設立時取締役”、“設立時代表取締役”となるのです。

 

しかしながら、『発起人会』で定めるとなると、発起人会を開催し、他に書類を作成する必要があり、『定款で定める』よりもほんの少しだけ手間がかかってしまうため、実務的には『定款で定める』会社がほとんどです。

 

定款認証したけれど…

過去に、このようなご依頼がありました。

 

定款で設立時取締役を複数名選定したのですが、その中の1人から『やっぱり取締役にはなりません』と言われてしまいました。
既に定款認証も済んでいますが、どうしたらよいでしょうか?

 

 

一度認証を受けた定款について、会社設立の登記を申請する前、もしくは登記申請後に誤字脱字や内容の誤りに気付くことがあります。

 

そんなとき、対応方法には主に2パターンあります。

①定款を修正して再度公証人の認証を受ける
②公証人から『誤記証明』を交付してもらう

 

①については公証人に再度認証手数料を支払う必要がありますが、②であれば費用は掛かかりません。

しかし、『誤記証明』とはいったん公証人が認証した定款に、誤字脱字や法的な記載の誤りがあったことを証明する書類です。つまり公証人が定款認証の際に見落としたことを意味します。

そのため、明らかに誤りであるケースを除いて、通常は誤記証明の交付を受けることは原則としてできません。

 

今回のケースも、“誤字脱字や法的な記載の誤り”という訳ではないため、形式に沿うのであれば公証役場で定款の『再認証』を行い、法務局へ設立登記を申請しなくてはなりません。

 

ですがこの『再認証』、

もう一度手数料として約55,000円を支払わないといけない可能性があります。

 

一昔前は、定款の認証手続きをもう一度するなら再度定款認証手数料を支払わなくてはならなかったのですが、現在では請求される事はほとんどありません。

 

しかし、それはあくまで公証人・公証役場の裁量に委ねられています。

公証人から「ダメ」と言われてしまえばもう一度手数料を払わなければなりません。

 

 

再認証できるのか?

お客様から「取締役候補者から就任承諾出来ないと言われてしまった」とご相談を受けた際、すぐに公証人に再認証の相談をしました。

しかし、公証人から再認証することが出来ないと言われてしまったのです。

 

実は、今回のケースは諸事情で半年以上前に定款認証を完了したものの、設立の登記申請はまだしていない状態でした。

したがって、かなり軽微な変更であったものの半年以上前の認証についてはかなり期間が空いてしまったため、再認証ではなく新たに認証し直すべきとの指示がありました。

公証人に拒否されてしまってはどうにもなりません。

 

また余談ですが他にも再認証が認められないケースもあります。

再認証とは一旦電子認証した定款の電子データだけでなく、それを印刷した定款謄本(同一情報)も回収しなければなりません。そして定款認証時に発行した公証役場の領収書(計算書兼領収書)も必要になります。

したがって、、これらが揃わなければ定款の再認証はできません。

 

もうすでに登記申請をしてしまっていて定款謄本を法務局へ提出した場合や書類紛失してしまった場合はこの方法は使えないという事になります。

 

解決策

ではこの場合はどうしたら良いのでしょうか?

一度このまま就任承諾していただいて設立登記を申請し、その後すぐに辞任登記をするという方法もあります。

ですが、これまた費用が余計に掛かってしまいます。

 

トラストに依頼した場合・役員変更(書類作成・申請)の報酬 …32,000円(税抜)

・その他実費 …2,000円~3,000円(税抜)

・登録免許税 …10,000円

 

そこで今回のお手続きでは、

 

①定款はそのまま(再認証しない)

②就任承諾書を添付しない

 

という方法で設立登記を申請致しました。

 

法務局からは「定款に定められていますが、就任しないということでよろしいですか」と確認のお電話がありましたが、問題なく手続きが完了致しました。

もちろん、該当する取締役候補者の方からは本当に就任しないかの意思を弊所でも確認するため、別途『就任承諾をしない旨』書類に署名捺印して提出をしていただきました。

 

 

まとめ

会社設立に限らず、『登記』というのは専門家である司法書士に頼まなくても、ご自身で出来るものです。

インターネットで検索すると必要な書類や書式、流れなどたくさんの情報が出てきます。

ですが、少しでもイレギュラーなことがあると悩んでしまい、手続きが滞ってしまうでしょう。

それどころかせっかく申請したのに不備が多くて却下されたり、無事に通ったとしても数年後に何か発覚したりと、大変な事態になりかねません。

 

今回の解決方法も実にシンプルな方法でしたが、一般の方がその答えにたどり着くには大変だと思います。

ですので、是非、登記の専門家である司法書士に依頼してほしいのです。

登記に関するお悩みがある方、是非司法書士法人トラストへご相談下さい。