“農地所有適格法人”とは?

お客様より、『会社で農地を取得して、農業参入をしたい』とご相談を頂く事があります。

農地を購入すれば良いだけのように感じますが、実はそうではありません。

農地を取得するには『農地法』という法律で色々と要件が定められているのをご存じでしょうか?

もちろん、法人で取得するだけではなく、個人で取得するにもいくつかの要件を満たした上で農業委員会に申請をして許可をもらう必要があります。

そして、法人で農地を取得するには【農地所有適格法人】になる必要があります。

 

こんなお悩みはありませんか??
会社で農地を所有して農業事業に参入したい
今は個人で農地を所有しているけど、法人化して農業を発展させたい
県外の会社だけど新潟の農地も所有したい

 

農業法人と農地所有適格法人

一般に、農業を行う法人を指す言葉として「農業法人」という名称がよく使われています。類似する言葉としては、他に「農業生産法人」「農地所有適格法人」「農事組合法人」があります。それぞれの意味を見ていきましょう。

 

①農業法人

農畜産物の生産や加工・販売など農業に関する事業を行う法人の広義の総称。農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法には「農事組合法人、株式会社又は持ち分会社で、農業を営むもの」と定義されています。

 

②農業生産法人

農地の使用及び収益する権利を取得することのできる法人のこと。平成28年4月施行の農地法一部改正によって、呼称が「農業生産法人」から「農地所有適格法人」に変更されました。

 

③農地所有適格法人

②に同義。農地法には「農事組合法人、株式会社又は持ち分会社で、次に掲げる要件の全てを満たしているもの」と定義されています。この要件については、「2.農地所有適格法人の要件」で詳しく見ていきます。

 

④農事組合法人

農業の協業による共同利益の増進を目的とする法人のこと。構成員の公平性が重視されることに特徴があります。農業協同組合法で定義されています。

 

つまり…

農業に関連する事業を行う法人の広義の総称が農業法人と言い、その中で、農地を取得できる要件を満たした法人を農地所有適格法人(旧:農業生産法人)と言います。

※以前は農業生産法人と呼ばれていた制度ですが、H28.4施工の改正農地法により【農地所有適格法人】への呼称変更、要件が緩和されました。

 

農地所有適格法人の設立

 

では、農地所有適格法人として活動したい場合は、どこに申請したら良いのでしょうか。

実は、農地所有適格法人になる為の会社設立手続きは通常の会社設立手続きと変わりないのです。

重要になるのは“農地を取得するとき”になります。

 

まず農地所有適格法人になる為には大きく4つの要件があります。

 

①法人形態要件

農地所有適格法人の要件を満たすためには、その法人が会社法人か農事組合法人でなければなりません。

また、株式会社が要件を満たすためには、すべての株式に譲渡制限がつけられている非公開会社でなければなりません。

ということは、公開会社である株式会社、NPO法人、一般社団法人、宗教法人、学校法人などは農地所有適格法人になることはできないことになります。

 

②事業要件

農地所有適格法人と認められるには、その法人の主たる事業が農業または農業関連事業でなければなりません。

農林水産省の通達によれば、主たる事業かどうかは、直近3年間における農業・農業関連事業の売上高が、法人の事業全体の売上高の50%を超えているかどうかで判断することとされています。

また、農業経営の実績がなく、これから新規に要件を満たそうとする場合は、今後3年間の事業計画に基づいて判断されることになります。経営計画・営農計画の妥当性が問われます。

 

③事業要件

農地所有適格法人の要件を満たすためには、株式会社においては議決権の過半数の株式を農業関係者が保有していなければならず、持分会社においては、社員の過半数が農業関係者でなければなりません。

ここでいう農業関係者とは、以下の範囲になります。

 

・農地の権利提供者(農地の売主や貸主)

・農作業委託農家(法人に農作業を委託する個人)

・農業の常時従業者(原則として年間150日以上農業に従事する者)

 

④役員要件

最後に法人の役員についての要件です。農地所有適格法人として農地を所有するためには、次の2つの要件に該当することが必要です。

・役員の過半数が農業(販売・加工も含む)に常時従事(原則年間150日以上)する者であること

・役員または重要な使用人(農場長など)のうち、1人以上が農作業に従事(原則、年間60日以上)すること

 

※1日を8時間労働として換算されているため、1日4時間ずつの場合、2日間で1日とカウントされます。

したがって、原則、兼務者や兼業者は常時従事者とは認められない場合があります。

※農林水産省の通達によれば、その法人の代表者(代表取締役など)は、農業が営まれている地域に居住し、そこで行われる農業に常時従事する者であることが望ましいとされています。

 

 

この要件を満たしていないと

農地所有適格法人になれない
 

 

農地を取得することが出来ないのです。
 

つまり、スムーズに農地を取得するには、この要件を満たした状態で会社設立をしなくてはなりません。

 

会社設立したけど構成員(議決権)の要件が満たされていないと株式の譲渡や増資といった手続きを、役員の要件が満たされていなければ役員変更登記をまたしなくてはならないのです。

せっかく設立していざ農業委員会へ行っても『要件を全て満たしてから来てください』と門前払いになってしまいます。

そんな事態を防ぐために、要件をしっかりと確認したうえで会社設立をしなくてはなりません。

ちなみに、商号に『農地所有適格法人』という言葉を入れる必要はありません。

 

 

 

農地所有適格法人の認定は?

 

農地所有適格法人として法人を設立した後は、農業委員会へ申請する必要があります。

ただし、“農地所有適格法人としての登録申請”をするという訳ではなく、

農地を所有したいということで農地法3条許可申請する際に、農地所有適格法人要件を満たしているかの審査がされます。

 

※まったくの新規参入する場合など、条件によっては農地法3条許可申請をする前に、農業委員会に【営農計画書】を提出し、審査される可能性があります。

必ず、所有予定の農地を管理する農業委員会へ事前に相談しましょう。

 

 

また、許可が出て農地を所有することができても、あくまで「今回の申請時点では農地所有適格法人の要件を満たしていた」というだけです。

 

 

毎年1回、決算月以後3ヶ月以内に農業委員会へ法人の経営状況等を報告する義務があります。

報告時に提出する書類によって農地活用や構成員状況について確認されるのですが、農業従事者であった方が退職したなど、農地所有適格法人の要件を満たさなくなっていた場合、農地所有を認められなくなります。

 

 

したがって、農地所有適格法人として農地を所有した後は、要件を常に意識して運営する必要があるのです。

 

 

※農地所有適格法人としての要件を満たさなくなった場合、すぐに農地が取り上げられるという訳ではありません。まずは是正勧告がなされ、農業委員会はじめ行政との協議を行い、早急に改善する必要があります。

 

まとめ

 

法人として農業に参入するには、当然ですが農地が必要です。

農地を取得する際に、農地所有適格法人でなければ農地の取得ができない決まりになっています。

 

トラストでは農地所有適格法人の要件とお客様が予定している内容をしっかりと精査し、会社設立までお任せ頂けるのでスムーズかつ簡単にお手続きを進めることが可能です。

そして農地所有適格法人となる会社の設立の実績もございますので安心してご依頼いただけます。