商業登記に必要な書類の原本還付はどこまでできるのか??

 

原本還付について

 

登記を申請する際、様々な書類が必要になります。

これらの登記申請書に添付する書類は、原本であることが必要とされていますが、

登記申請人が、登記の申請と同時に当該添付書類の原本に相違がない旨を記載した謄本(写し)を添付して、添付書類の還付を請求した場合には、原本を返却してもらう事が出来ます。(商業登記規則49条)。

これを原本還付と言います。

 

“還付を請求することができる”ですので、還付をするかどうかは任意となります。

はたして、どこまでの範囲で原本還付することが出来るのでしょうか?

 

原本還付できるのか?

 

先日、お客様よりこのようなご依頼がありました。

 

新しく役員を追加するにあたり、個人の印鑑登録証明書が必要だという事は分かりました。
登記した後に印鑑登録証明書を返してもらうことは可能でしょうか?

 

 

取締役として新しく就任される方がいる場合、書類(就任承諾書等)には新取締役の実印で捺印頂くのですが、併せて『印鑑登録証明書』が必要となります。

 

今回、登記が終わったあとに控えている他の手続きにおいても『印鑑登録証明書』を使用しなくてはならないそうで、原本還付できるかの問い合わせがありました。

勿論、登記用とは別で1通新たに取得する方が無難ですが、取得のため市役所に行く時間が無いため、可能であれば使い回ししたいとのご意向です。

 

そもそも、登記における原本還付とは、法務局に出した添付書類の原本を返却する手続きになりますが、

①原本還付がそもそもできない書類があること
②原本還付は黙っていてできるものではないこと

に注意しなくてはなりません。

 

さて、登記には大まかに不動産登記(相続登記含む)商業登記で分かれているのですが、実は、それぞれで取扱が異なるのです。

 

 

どこまで原本還付可能なのか?

 

【原本還付の対象となる書類】

不動産登記

不動産登記では、原本還付が可能な書類とそうでない書類が法令で(わかりづらく)規定されています。

 

大まかに

・当該申請のためにのみ作成された書類(登記原因証明情報など)
・他の用途が無い委任状
・印鑑証明書(相続登記など例外有)

以外は、基本的に原本還付が可能となります。

印鑑証明書はそれぞれ用途に応じて法令で定められており、確認が必要となります。
※なお、印鑑証明書が原則的に原本還付できないのは、他のことに不正に用いられないように法務局が回収してしまおうという趣旨だそうです。

 
 
 

商業登記

商業法人登記では、原本還付できない書類はありません。
理由は、「できない」とする根拠規定が存在しないからだけなのです。

 

 

そしてなんと、不動産登記と違い、印鑑証明書はもちろんの事、法務局に充てた上申書や委任状までも原本還付することが出来てしまいます!

 

実務的に委任状を原本還付することはほとんど無いとは思いますが、根拠規定がないという理由だけで全ての書類が原本還付出来てしまうのです。

 

つまり、今回のお客様の要望通りに印鑑登録証明書の原本還付が可能になります。

 

 

【原本還付の方法】

原本還付するには、原本のコピーを作成し「原本と一緒に」法務局に提出します。

コピーが原本と相違ないことを確認されると、完了書等の書類と一緒に返却されます。

 

また、コピーには任意の場所に「これは原本と相違ない」と記載し、押印することが必要です。

 

トラストでの対応

 

弊所では、登記用として印鑑登録証明書をお預かりしているので、基本的には原本還付を行っておりません。

ですが、今回のケースのように他で使用する目的があるようなケースでは、臨機応変に対応させて頂きます。

お手続きのご依頼を頂く際に是非一度ご相談ください。

 

※委任状については、当該申請のみの用途となるため原本還付する必要がないため、そのまま原則に沿って原本提出のみを行っております。

 

 

ちなみに

商業登記申請時に原本還付請求を行えば、問題なく登記完了時に原本が返却されます。

ですが、この原本還付請求をうっかり忘れてしまった場合はどうなるのでしょうか?

 

株主総会議事録など、通常は会社で保管するような書類をうっかり原本のみ提出してしまった場合、

 

原本は戻ってきません。

 

 

法務局から『原本還付を忘れていませんか?』という連絡が来ることは無く、完了書類一式が戻ってきた時点で気づく…という事もあったそうです。

(別の事務所での情報です。その後、なんとか法務局に依頼して還付してもらったそうですが、凄く大変だったそうです。)

 

また、登記申請した後に「原本還付忘れてしまった!法務局にすぐ連絡しよう!」と気づく事もあるかと思います。

ですが、登記審査中に申し出ても原本還付は受けられず、登記官の指示に従い、別途必要資料の交付手続きを行う必要があるそうです。

 

 

 

トラストでは、登記申請内容は勿論、申請時の原本還付に関するチェックも行っておりますので、今まで原本還付請求をし忘れた…という事はございません。

ですが、印鑑登録証明書のように、お客様都合での原本還付請求については登記申請後には受け付けられませんので、かならず前もってご相談ください。