会社設立と個人事業主の違いとは?法人化のメリットや会社設立の手順を解説
個人事業主として事業を展開していると、会社設立を検討するタイミングが訪れることもあるでしょう。
しかし、法人化の必要性や、どのタイミングがよいのかで悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、会社設立と個人事業主の違いや法人化のメリット・デメリット、法人化のタイミングをまとめました。
また、会社設立の手順や注意点も紹介します。
これから会社設立を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
会社設立と個人事業主の主な違いは、以下のとおりです。
| 会社設立 | 個人事業主 | |
| 設立の手続き | 定款作成・登記申請が必要 | 税務署に開業届を提出 |
| 責任の範囲 | 有限責任(会社財産の範囲内のみ) | 無限責任(個人がすべて背負う) |
| 税金の種類と税率 | 法人税 一定税率 |
所得税 累進課税 |
| 保険・年金 | 社会保険 厚生年金加入 (加入義務あり) |
国民健康保険
国民年金 |
| 節税効果 | 給与や役員報酬で節税できる | 経費範囲に限界がある |
| 信用度 | 高い(取引先・金融機関からの信用を得やすい) | 低い(法人に比べると信用を得にくい) |
表のように設立時の手続きや事業にかかわる税金の種類など、多くの違いがあります。
ここでは、それぞれの特徴について、詳しく見ていきましょう。
会社設立(法人化)の特徴
会社設立とは、法的な手続きにより個人と同様の権利や義務を認められた存在である「法人」を設立することです。

法人は、定款作成や資本金の払込みなどを行い、法務局に会社の設立登記を申請する必要があります。
登記することで国から認められた存在となり、個人事業主よりも社会的な信用度が高いです。
個人事業主の特徴
個人事業主とは、税務署に開業届を提出して個人で事業を営んでいる方を指します。
開業届は未提出でも罰則を受けるわけではありません。
ただし、青色申告を行う場合は提出が必須です。
事業にかかる税金は、所得税や個人事業税です。
所得税は累進課税となっているため金額によって税率が変わり、個人事業税は業種によって3〜5%の税率となります。
法人に比べると信用度が低くなり、金融機関からの融資も容易に受けられないかもしれません。
税制や信用度の違いから、事業規模によっては法人化を選択することでメリットを得られる可能性もあります。
個人事業主は、どのタイミングで法人化に踏み切るかが重要となるでしょう。
個人事業主が事業を続けていくうえで、会社を設立して法人として活動することが可能です。
ここでは、個人事業主が会社を設立するメリットを解説します。
節税効果が期待できる
個人事業主が会社を設立すると、税制度が変更するため、個人事業主として活動するよりも節税できる可能性があります。

個人事業主は最大45%の累進課税制度である「所得税」を納める一方、法人が納めるのは「法人税」です。
中小法人の場合、年800万円以下の所得には15%、それを超える部分には23.2%の税率が適用されます。
利益によっては法人税で計算したほうが納税額を抑えられ、益が増えるほど節税効果が期待できます。
信用力の向上につながる
会社を設立することにより、信用力の向上が期待できます。
会社設立には、法務局で会社の設立登記を行う必要があるためです。
法人登記されることで、国から認められた事業団体となり、取引先や金融機関からの信頼が高まります。
個人事業主よりも信用度が高くなるため、関係企業や金融機関との取引がしやすくなるでしょう。
負債の責任が限定される
会社を設立すると、事業に失敗した場合に背負う責任が限定されます。
法人は有限責任となり、仮に事業が失敗しても資本金以上の返済義務がないためです。
たとえば、資本金3,000万円で会社を設立して倒産した場合、出資者に対して3,000万円の返済義務が生じますが、それ以上の返済は必要ありません。
一方で、個人事業主は無限責任のため、事業に失敗して負債を抱えた場合、全額を返済する必要があります。
個人事業主が会社を設立した場合、メリットだけではなくデメリットもあります。
デメリットを理解することで会社設立時に対処しやすくなるため、しっかりと確認しましょう。
会社設立に費用がかかる
会社設立時は登記が必要となり、その際に費用がかかります。
資本金の金額によって異なりますが、20万〜30万円ほどの登記費用が必要です。
また、会社概要の決定や定款の作成、資本金の振り込みなど、手間や事務負担も大きくなるでしょう。
一方で個人事業主の場合は、税務署に開業届を提出することで完了するため、それほど手間がかからず、費用も必要ありません。
社会保険への加入義務が生じる
会社設立にともない、社会保険の加入義務が生じます。
社会保険とは、健康保険や厚生年金、労災保険、雇用保険などです。
法人の場合、事業規模や従業員の人数に関わらず加入が義務付けられており、代表者1人のみの会社でも加入する必要があります。

一方で個人事業主の場合、一部の業種を除いて従業員が5名未満であれば社会保険への加入は義務付けられていません。
そのため、事業規模が小さいうちは保険料負担を抑えられる点が特徴です。
納税額が増える可能性がある
会社設立によって、納税額が増える可能性もあります。
法人の場合、その年が赤字決算であっても納税義務が発生するためです。
たとえば、法人は住民税が均等割となっており、赤字であっても一定金額の納税が必要です。
法人化すると税率が軽減される場合がありますが、赤字決算が続くと納税額が増える可能性もあるため注意しましょう。
一方で、個人事業主の場合は赤字が発生すると所得が0円となり、納税義務はありません。
さらに、赤字を3年間繰り越せるため、赤字決算によって節税できる可能性があります。
個人事業主が法人化を検討するタイミングは、所得税と法人税の税率の違い、消費税の納税義務がポイントとなります。
ここでは、それぞれのタイミングについて詳しく見ていきましょう。
個人事業の所得が800万円を超えるとき
個人事業主としての所得が800万円を超えると、所得税よりも法人税の税率が低くなります。
たとえば、個人事業主の所得金額が800万円の場合、所得税の税率は23%です。
一方で、法人として得た利益が800万円の場合、法人税の税率は15%となります。
ただし、法人で800万円を超えると税率が23.2%となるため、所得金額が600~700万円を超えそうなタイミングで一度専門家に相談するのがおすすめです。
事業を拡大したいとき
事業を拡大したいタイミングで法人化するのがおすすめです。
これにより対外信用が向上し、取引しやすくなります。
また、株式の発行により事業資金を調達できる可能性もあり、法人化によってビジネスチャンスが広がるでしょう。
さらに、従業員を雇用する際も、法人のほうが安心感を与えられ、雇用しやすくなるかもしれません。
ここでは会社設立の手続きや流れを解説します。
実際に会社設立を検討する際に役立つ内容ですので、ぜひ参考にしてください。
1.社名や資本金など会社の概要を決める
まずは、会社の概要を決めましょう。
社名や所在地、資本金、事業目的、役員構成など、立ち上げる会社の基本事項を決定します。

また、法人登記の際に、法人用の実印が必要になるので、この時点で作成しておくと便利です。
ただし、オンラインで登記を行う場合、実印は任意となっているため、必ずしも必要になるとは限りません。
2.定款を作成して認証を受ける
定款とは、会社運営について定められたルールのことです。
定款には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」があり、記載がないと無効になります。
不安な場合は、専門家に相談するとよいでしょう。
定款の作成は法律で決められており、公証役場での認証手続きが必要です。
基本的に収入印紙が必要となりますが、電子定款であれば必要ないため収入印紙代(4万円分)を節約できます。
3.資本金の払い込みを行う
定款の認証を受けたら、資本金を払い込みます。
資本金の払い込みは会社設立前に行うため、代表者名義の銀行口座へ入金しておくとよいでしょう。
資本金の設定は1円から可能ですが、少なすぎると足りなくなる恐れがあります。

4.法人登記を行う
定款の認証、資本金の払い込みが完了したら、法務局で法人登記(会社設立登記)を行います。
株式会社を立ち上げる場合に必要な書類は以下のとおりです。
- 株式会社設立登記申請書
- 認証済の定款※
- 発起人決定書
- 代表取締役を選定したことを証明する書類
- 代表取締役、監査役の就任承諾書
- 資本金払い込み証明書
- 代理人に申請を委任した場合は委任状
※定款認証を行う上で必要な書類もあります。
募集設立を選んだ場合や合同会社のように株式会社以外の形態を選択した場合は必要書類も異なるため、不明な場合は法務局に確認しましょう。
個人事業主から会社を設立して法人に移行する場合の注意点を解説します。
法人化の完了後に必要な手続きもあるため、しっかりと確認しましょう。
廃業後の確定申告を忘れない
個人事業主廃業後の確定申告を忘れないようにしましょう。
法人化した年の1月1日から個人事業主として事業を行っている場合は、その年に廃業したとしても確定申告が必要となります。
法人が立ち上がったとしても、個人で得た所得がそのまま法人に引き継がれるわけではありません。
個人で得た所得がある場合は、確定申告をしないと脱税の疑いで処罰の対象となる可能性もあります。
個人事業主としての確定申告を忘れないように注意しましょう。
廃業後は事業税の支払いが生じる
個人事業主の廃業後は、廃業届の提出など必要な手続きを行いましょう。
廃業した年についても、廃業日までの所得について確定申告を行えば、その内容に応じて個人事業税が課税されます。

個人事業税は、所得税の確定申告書の内容をもとに計算され、後日、都道府県から納税通知書が送付されます。
ただし、見込額で控除が受けられる特例があるため、廃業手続き前に活用するとよいでしょう。
一度法人化すると個人事業主に戻るのは難しい
会社設立後、再び個人事業主に戻ることは、簡単ではありません。
会社の廃業手続きに加え、債権者への通知の為の公告の手配など、手間やコストがかかります。
個人事業主から法人に移行するケースよりも複雑であるため、法人化はしっかりと検討して慎重に行いましょう。
会社設立と個人事業に関するよくある質問と回答を紹介します。
多くの人が疑問に思う内容に目を通しておくと、会社設立や法人化の際に失敗するリスクを抑えられるでしょう。
個人事業主が法人化すると何が変わる?
個人事業主が法人化することで、信用度が高くなります。
会社設立の登記により公的に認められるため、社会的な評価も高くなるでしょう。
また、個人事業税・所得税から法人税となり、税率が変わることで節税効果を得られる可能性があります。
副業から、個人事業主と会社設立のどちらを目指すべき?
個人事業主と会社設立では、事業所得によってどちらがよいか異なります。
たとえば、事業所得が800万円未満であれば、税率の低さから個人事業主のほうがお得です。

また、会社設立には登記費用や社会保険の加入など、手間やコストがかかるため、ある程度の利益が見込めないと損失が出る可能性もあるでしょう。
このように収入規模や事業の成長段階に合わせて、どちらが有利になるか判断することが重要です。
個人事業主と法人の掛け持ちは現実的?
個人事業主と法人は「別の事業を行う」「個人事業と法人の間で外注費を支払わない」といった場合は、掛け持ちが可能です。
たとえば、法人として活動中に、法人と異なる事業を始めたい場合に、個人事業主として開業する方法もあります。
一方で、1つの法人で複数の事業を行うことも可能です。
ただし、いずれか1つの事業が失敗して法人の存続が危うくなるリスクがあるため、事業ごとに会社を設立する経営者もいるようです。
実際に、複数の事業を行う場合にどのような形態が最適か、よく検討してから始めるとよいでしょう。
会社設立の相談ができる専門家には、税理士・司法書士・行政書士が挙げられます。
そのなかでも、司法書士に依頼するメリットを解説するので、参考にしてください。
登記の専門家である
司法書士は登記の専門家であるため、会社の設立登記を安心して任せられます。
登記のスペシャリストであり、書類作成のプロでもあるため、申請書類の記入漏れといった手続き上のミスを防げます。
登記が必要な手続きは、司法書士に任せるのが一般的です。
会社設立をスムーズに行える
専門家に任せることで、会社設立がスムーズに進みます。
司法書士は、書類の作成や必要書類の収集など、設立登記に必要な手続きに慣れているためです。
自分で行う場合は、わからないことを調べながら進めることになり、時間もかかるでしょう。
司法書士に依頼することで、自分で行うよりも、早く会社を設立できます。
通常業務に集中できる
司法書士に任せることで、通常業務に集中できます。
会社設立の手続きをすべて司法書士に任せられるため、本業以外の手続きに時間を取られません。
通常業務を普段どおりに進められます。
会社設立に必要な登記手続きは、司法書士法人トラストがおすすめです。
今まで数多くの会社設立に携わっており、経験・実績のどちらも豊富に持ち合わせています。

また、オンライン申請や電子定款に対応しており、費用を大幅に抑えられます。
さらに、条件が揃った場合は最短3日で会社設立が可能です。
会社設立をスムーズに行いたい方は、司法書士法人トラストへご相談ください。
会社設立と個人事業主では、事業にかかわる税金の税率や健康保険・年金、負債の責任範囲などが異なります。
さらに、会社設立には登記申請を行う必要があり、国に認められることで個人事業主よりも信用度が高くなるでしょう。
法人化することで、節税効果や企業・金融機関との取引がしやすくなるため、年間所得が800万円程度になりそうなタイミングで法人化を検討しましょう。




