ネット銀行で資本金を払い込んだけど…?設立登記で意外とつまずく“証明書の壁”

会社を作るとき、最初に行う大事な手続きのひとつが「資本金の払い込み」。

そして登記申請の際には、それを証明するための書類――いわゆる「払込証明書」を添付する必要があります。

 

このとき、通帳のコピーを使うのが一般的なのですが、

最近は、ネットバンキングや通帳のない口座を利用して、会社設立時の資本金を払い込むケースがとても増えています。

「通帳がないのでどうしたらいいの…」

「振り込んだ証拠をどうにか印刷して添付すればいいのでは?」と軽く考えがちですが、実は現場では“あるある”のつまずきポイントになっているのです。

 

払込証明書とは?

会社設立時には、出資が完了していることを証明するための「資本金の払込証明書類」を登記の際に添付する必要があります。

これは、実際にお金が払い込まれていることを法務局に示す、非常に重要な書類のひとつです。

 

一般的には、会社を設立する発起人が自分名義の銀行口座に資本金を振り込む形を取り、

その証明として、通帳の表紙(口座番号・名義人が分かる部分)と、入金が記載されたページのコピーを提出します。

 

しかし近年では、金融機関によっては「通帳レス口座」や「スマート通帳」など、紙の通帳自体を発行しないサービスが主流になりつつあります。

特にネット銀行やスマートフォンで完結するバンキングサービスを利用している場合、「そもそも通帳が存在しない」「Web明細のみで管理している」というケースが珍しくありません。

 

ネットバンキングの落とし穴

 

そのため、通帳がない場合には、ネットバンキングの入出金明細や口座情報の画面を印刷したものを代替資料として添付するのが一般的になっています。

ですが、ここに思わぬ落とし穴があるのです…。

 

 

実際にあったケース①

「入金は確認できるけど…口座名義人の名前が表示されていない!」

 

あるお客様が、ネット銀行の口座に資本金を入金し、その画面を印刷して持参されました。

たしかに入金金額や口座番号、振込日などは明確に記載されています。

 

しかし、肝心の“誰の口座なのか”=名義人の氏名が画面上に表示されていなかったのです。

これでは、法務局が「本当に発起人の口座に資本金が払い込まれたのか?」という確認ができず、補正対象となります。

 

 

実際にあったケース②

「セキュリティでスクリーンショットが撮れない!?」

 

ある金融機関のネットバンキングでは、ログイン後の口座詳細画面についてスクリーンショットが禁止設定されており、スマホでもPCでも画像が保存できないという状況に。

プリントアウトすらできず、「払込証明の資料をどうすればいいのか分からない」と相談を受けました。

 

 

実際に行った解決策

 

このように、最近ご相談いただいた複数のケースでは、ネットバンキング特有の制限により「資本金払込証明に必要な画面がスクリーンショットできない」という問題が何度か起こりました。

そのような場合でも、状況に応じた工夫と事前の照会により、無事に登記が受理された実例があります。

 

ケース①の場合
「入金は確認できるけど…口座名義人の名前が表示されていない!」

 

この方が利用していた金融機関では、

資本金が入金された履歴は表示されるものの、口座名義人の氏名は別のページでしか確認できない仕様でした。

 

そこで

 

・入金履歴のページ(口座番号・入金金額・日付が表示)

・別ページにあった名義人情報の表示画面(口座番号が同じ)

 

この2ページをそれぞれ印刷し、まとめて提出したところ、法務局で無事に受理されました。

 

🔍 ポイント

払込証明は「1枚の画面で全情報が揃っていなければダメ」というわけではなく、複数の資料で要件を満たしていればOKです。

 

 

ケース②の場合
「セキュリティでスクリーンショットが撮れない!?」

最近では、セキュリティ対策の一環として、ネットバンキングの特定画面でスクリーンショットや印刷が制限されている金融機関が増えてきています。

このようなケースで、実際に次のような対応を行いました。

 

  1. 金融機関によっては「スマホはNGでもPCはOK」な場合も

あるお客様のケースでは、スマートフォンのバンキングアプリでは対象画面のスクリーンショットが一切できなかったものの、
パソコンから同じ金融機関のWebサイトにログインしたところ、該当画面が表示され、印刷や保存が可能になりました。

このように、同じ銀行であっても、スマホとPCでは画面の仕様や制限が異なる場合があるため、別の端末を試してみるのも有効です。

 

 

  1. それでも出力できない場合は「画面を撮影する」という方法も

一方で、金融機関によってはスマホ・PCともにスクリーンショット不可/印刷不可というケースも存在します。

この場合、やむを得ず、別の端末(スマホやデジカメ)で画面を直接撮影し、その画像を印刷して資料として使用しました。

 

このときに重要なのは、写真に写る情報が明確に読み取れること。

名義人・口座番号・入金日・金額などが鮮明に映っていれば、法務局側でも「払込証明」として認められる場合があります。

 

※実際に、撮影画像を印刷したものでも、事前に法務局へ照会したうえで申請を行い、問題なく登記が受理されたケースがあります。

 

 

ケース①②共通の対応策:キャッシュカードで名義を補完

別のお客様では、

・入出金履歴のページ:口座番号と振込金額は表示されていた

・しかし名義人情報のページがスクリーンショット不可(PCもスマホも対応不可)

 

という状況に。

 

 

 

そこで

お客様が持っていたキャッシュカード(氏名・口座番号記載)が履歴ページの口座番号と一致していることを確認し、法務局に事前に照会。

可否を確認した上で、入出金履歴のスクリーンショット+キャッシュカードのコピーという合わせ技で申請しました。

結果、こちらも問題なく登記が受理されました。

 

🔍 ポイント:

キャッシュカードには「氏名+口座番号」が明記されているため、名義を証明する補足資料として有効となることがあります。

法務局によって対応が変わることもあるため、事前に確認をとっておくことで、より安心して申請を進めることができます。

 

 

このように、「通帳がない」「スクリーンショットできない」という場合でも、
複数の画面を組み合わせたり、補完資料(キャッシュカードなど)を活用したりすることで、十分に対応可能です。

ただし、判断が微妙なケースもあるため、事前に法務局へ照会を行うことが非常に重要です。
迷った場合は、登記実務に詳しい司法書士に相談することで、スムーズに設立を進めることができます。

 

まとめ

 

会社を立ち上げるとき、最初に行う登記――それが「設立登記」です。
一見シンプルに見えるこの手続きも、実は細かなルールや書類の要件が多く、ちょっとした見落としが思わぬトラブルにつながることがあります。

とくに最近増えている「通帳のないネット銀行の口座」を使った資本金の払込みでは、

  • 金融機関によって画面構成や表示項目が違う
  • スクリーンショットが制限されていて、必要な情報を印刷できない
  • 名義人の表示が別画面に分かれている
  • 登記に必要な情報が一目で揃わない

といった理由から、「ちゃんと払込は済ませたのに、書類が足りない」と**法務局から補正(出し直し)を求められるケースも少なくありません。
補正が発生すれば、設立完了日が遅れることにもつながり、融資・補助金・契約スケジュールなどに影響を及ぼすおそれもあります。

 

こうした細かい要件や金融機関ごとの対応の違いも、司法書士であれば経験に基づいて適切に判断できます。
また、事前に法務局に確認を取ったうえでの対応や、代替資料の提案、スムーズな添付書類の整え方などもすべてお任せいただけます。

 

「自分でやってみたけど、ここで詰まってしまった」
「今後のスケジュールに影響させたくない」

そんな方こそ、ぜひ一度、私たち司法書士法人トラストまでお気軽にご相談ください。

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