【副業NG?】合同会社の業務執行社員に“競業禁止”ルールがあるって知ってましたか?

近年、合同会社の設立数が急増し、知名度もグンと上がっています。

「株式会社よりも自由で柔軟に経営できる」――そんなイメージから、起業や副業の際に合同会社を選ぶ方も増えてきました。

しかし、自由度が高いと言われる合同会社にも、実は法律で定められた重要なルールがあります。

そのひとつが「業務執行社員の競業禁止」規定です。

 

 

「合同会社なら、副業も自由にできるでしょ?」

そう思っている方も多いかもしれません。でも実は――

会社法で「業務執行社員の競業禁止」が明記されているんです!

 

知らずに副業した結果、トラブルになってしまうケースも…。

この記事では、会社法第594条に基づく「合同会社における競業制限」について、解説します。

 

基本!合同会社の「社員」と「業務執行社員」

合同会社の構成員は「社員」と呼ばれますが、この「社員」という言葉は、株式会社の「株主」とは少し意味合いが異なります。

 

「社員」とは?

合同会社における「社員」とは、会社に対して出資を行い、会社の権利義務の主体となる者を指します。

つまり、会社の所有者であり、利益の分配を受ける権利を持つ人たちです。

また、社員は会社の重要な意思決定に参加する権利を有しています。

 

「業務執行社員」とは?

一方、「業務執行社員」は、会社の業務執行、すなわち経営や日常の業務を実際に行う者を指します。

株式会社における取締役に相当する役割であり、会社を代表して契約の締結や業務の遂行を行います。

 

両者の関係

合同会社では、社員全員が業務執行社員である場合もあれば、一部の社員のみが業務執行社員として経営に関わっている場合もあります。

このように、社員は「会社の所有者」という立場であり、業務執行社員は「会社の経営者・実務担当者」という役割を担っています。

 

合同会社と株式会社の「出資者」と「経営者」の違い

 

項目 合同会社(LLC) 株式会社(株式会社)
出資者の呼び方 社員(出資者、オーナー) 株主(出資者、オーナー)
経営に関わる人 業務執行社員(業務執行権を持つ社員) 取締役(選任された経営者)
出資者と経営者の関係 社員の中から業務執行社員を決めることが多いが、

必ずしも一致する訳ではない

株主と取締役は原則別。(同じこともある)

取締役は株主総会で選任される

経営権の自由度 高い。定款で自由に決められる 法律や定款で定められた形式に沿う必要がある
競業禁止ルール 業務執行社員に適用(会社法第594条) 取締役に適用(会社法第355条)

 

副業OKと思っていたら…業務執行社員の競業禁止でトラブルに

ある合同会社の業務執行社員であるAさんは、

合同会社は自由度が高いから、副業も大丈夫だろう。自分がやる予定のものは、今の会社と全く同じ業種じゃないし、問題無い筈だ!

と考え、会社の事業とは少し異なる副業を始めました。

 

ところが、他の社員から「その副業、実は競業禁止のルールに抵触するのでは?」と指摘され、問題に発展…。

実際には、副業の内容が会社の主たる事業と競合する部分があり、他の社員全員の承認を得ていなかったため、法律違反の可能性がありました。

 

結局、会社内で話し合いを重ね、Aさんは副業の一部を辞めることに…。

この経験から、社員全員の合意なしに競業することのリスクを痛感し、合同会社の自由さの中にも大切なルールがあることを学んだのです。

 

また、今回は副業を辞める形で収束しましたが、業務執行社員が会社の承認なしに競業行為を行った場合、会社との信頼関係が損なわれるだけでなく、損害賠償請求や解任請求など法的なトラブルに発展する可能性があるため、本当に注意が必要なのです。

 

絶対に競業禁止という訳ではない

 

しかしながら、合同会社の業務執行社員に課される競業禁止の義務は、必ずしも「絶対禁止!」という訳ではありません。

会社法第594条には、業務執行社員が会社の事業と競合する行為をする場合、**「他の社員全員の承認を得れば許される」**と明記されています。

 

つまり、社員全員の合意さえあれば、業務執行社員が副業や兼業であっても会社と競合するような事業に携わることも可能なのです。

 

ただし、その承認は形式的なものではなく、会社の利益を守る観点から慎重に判断されるべきです。

社員間でルールや範囲を明確にし、合意の内容を書類で残しておくことがトラブル回避につながります。

 

競業行為の規制を強化する場合の記載例

(競業の禁止)

第○条 社員は、当該社員以外の社員の全員の承認を受けなければ、次に掲げる競業行為をしてはならない。

一 自己又は第三者のために当会社の事業の部類に属する取引をすること。

二 当会社の事業と同種類の事業を目的とする会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。

 

競業行為の規制を緩和する場合の記載例

(競業の禁止)

第○条 社員は、当該社員以外の社員の全員の承認を受けなければ、次に掲げる競業行為をしてはならない。

一 自己又は第三者のために当会社の事業の部類に属する取引をすること。

二 当会社の事業と同種類の事業を目的とする会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。

このように、合同会社は自由度が高いため、「競業禁止」と言ってもケースバイケースで許容される場合があるのが実態です。

だからこそ、事前にしっかり話し合い、全員が納得したうえで進めることが大切です。

 

まとめ

合同会社の業務執行社員には、会社の利益を守るための「競業禁止義務」が法律で定められています。

しかし、この義務は「絶対に禁止」というわけではなく、他の社員全員の承認を得れば競業行為も可能です。

そのため、副業や兼業を検討する際は、まずは社内でしっかり話し合い、承認を得ることが何より大切です。

無断で競業行為を行うと、信頼関係の悪化や法的トラブルに発展するリスクもあるため、注意が必要です。

 

 

合同会社は自由度の高い会社形態ですが、自由だからこそトラブルを防ぐためのルール作りや手続きが重要になります。

定款の作成や変更、社員間のルール設定については、専門的な知識が求められるため、専門家である司法書士に相談・依頼することを強くおすすめします。

適切な手続きを踏むことで、安心して経営に専念できる環境を整えましょう。