定款内容の重要性
インターネット社会である現在、格安で設立できる代行サービスや無料で使える書類の雛形が多く出回っています。
しかし大事なポイントを見落とすと設立してから
「こんなはずではなかった…!」
と後悔することも……
今回はそんな事例をご紹介致します。
Webデザイン事業をされている合同会社のA社長。
社員はA社長のみで、いわゆる一人会社になります。
(※社員とは出資者のことで、従業員の事ではありません。)
事業を始める時、
できるだけ設立に関する初期費用は節約したい!!
と考え、設立費用の安い合同会社を選択。
さらに定款作成から設立手続までインターネット上の情報や雛形を参考にして、全て自分一人で手続を行いました。
数年後、事件は突然に…
事業も軌道にのり、売り上げも利益も好調な時、突如おおきな事件が起きました。
なんと、A社長が急死してしまったのです。
A社長の妻であるBさんは、自身も従業員として夫を支えていたため、A社長の会社を継いで事業を継続するつもりです。
しかしながら、A社長の作った会社では、妻Bさんは継ぐことができないようになっていたのです。
もちろん、これはA社長の意図しない内容です。
株式会社の場合は、相続人に株が相続されますので、相続した人が新たな代表を選任し、事業を継続したり、廃業を検討したりすることが可能です。
ですが、合同会社の場合はそう簡単にはいかないのです。
なんと、社員が亡くなるのと同時に会社を続けることが出来なくなってしまうのです。
会社法という、会社に対するあらゆるルールを定めた法律で決まっており、残念ながら合同会社を存続させる方法は無く、いきなり事業ができなくなってしまいます。
家族はもちろん従業員や第三者にも多大な影響を与えかねません。
『妻や子などに相続させれば良いのでは??』
そうお考えの方。その通りです。
そうすれば会社は潰れずに継続して経営できます。
しかし
それはあくまでも【定款】にあらかじめ定められていればの話です。
定款に相続によって持分を承継できる旨をあらかじめ設定しておくことで、今回のような問題は回避できます。
ですが、前もって定めておくことが必要で、社員が死亡した後に定款を変更しても相続することはできません。
後々後悔しないように
今回のA社長は最初にも記載したとおり、定款作成から設立手続までインターネットや雛形を参考にして全て自分一人で行いました。
実はこの時作成した定款は“基本的な内容”しか載っておらず、しかも司法書士の監修を受けることがないまま今に至ります。
そのため、今回の事例では、定款で何も定めておらず解散となってしまったのです。
仮にあらかじめ定款で定めていれば、妻や子といった相続人が社員として事業活動を続けることもできますし、他の者に社員の地位(持分)を譲渡して社長を変わることも可能だったのです。
最初の初期費用をケチらず、しっかりと司法書士に依頼し定款を作成・確認してもらっていれば防ぐことが出来ました。
小さなミスが大きな問題へとつながってしまったのです。
※この事例はフィクションです。実在する一切の個人・団体とも関係はございません。
Xさんは、10年前に脱サラした後、妻Yさんと2人で飲食店を経営することになりました。
この飲食店は、近所でも評判の店となり、売上も利益も伸びていったので、節税のために法人成りをすることにしました。
合同会社は手続が簡単で一人でも設立手続ができそうなので、インターネットで定款のサンプルを検索して良さそうなものを見繕い、Xさんと妻Yさんを出資者(社員)にして、飲食店の経営元となる「XY合同会社」を設立しました。
出資をする際、
サラリーマン時代の貯金もありますしね。
夫をたてるという意味もあり出資額は少額にします。
なにより、今までパートで稼いできた貯金ではあまり多く出せないですしね…。
それぞれ、出資額については意見が一致し、下記の割合で出資することになりました。
(定款を一部抜粋)
第○条 当会社の社員の氏名及び住所、出資の目的及びその価額は下記のとおりである。
1.(Xの氏名) :400万円 新潟市中央区~
2.(妻Yの氏名):100万円 新潟市中央区~
第○条 当会社の業務は、社員が執行する。
数年後、事件は突然に…
合同会社を設立してから、従業員も数名雇って売上を伸ばしていき、経営は順風満帆に思えましたが…
事件は突然に起こります。
些細なことからXさんと妻Yさんとの間で経営に関して意見が合わないようになってしまい、とうとう夫婦で経営の方向性の違いから喧嘩するようになってしまったのです。
ここで、株式会社であれば出資の割合に応じて株が発行されるため、Xさんの方が議決権をもっており、何を決めるにもXさん主導で経営をすることが出来ます。
しかしながら、合同会社はそうはいかないのです…。
なんと、この二人の会社では、多めに出資したXさんと妻Yさんの権利は同等になっているのです。
しかも、お互い「絶対に合同会社の社員はやめない」「自分の意思は曲げない」と言うものだから、業務に関して何も決めることができず、経営が立ち行かなくなってしまったのです。
※この事例はフィクションです。実在する一切の個人・団体とも関係はございません。
後々後悔しないように
今回のお二人のケースでは、
会社の実態に合わせた業務執行に関する定めを定款におくことで回避できたケースになります。
合同会社では、原則として、出資者=社員=役員となります 。
そして、合同会社の場合、会社の経営方針を決定したり、運営のための契約、従業員を雇うなど、業務執行を社員が行います。
社員が2人以上の場合は、定款に定めがない限り、社員頭数の過半数(2分の1以上ではありません)の賛成で決定します。
したがって、社員が2人だけのときは、2人の意見が一致しない限り業務執行の決定をすることができないので、意見が対立すると経営が停滞するわけです。
仲良く意見が一致する(あるいは説得で解決できる)ときは即時に意思決定できるメリットがありますが、Xさんの事例のように感情的な対立が発生すると説得も難しく、
運営はにっちもさっちも行かなくなります。
このように業務執行の意思決定ができず経営が行き詰まることをデッドロックと言います 。
そこで、
合同会社の基本である1人1議決権(等)とするのではなく、
株式会社のように出資割合に応じて議決権(等)を持たせることでデッドロックを防ぐことが出来ます。
※勿論、出資額を決める際は決議用件等と照らし合わせて決める必要があります。
お手続きのため、お客様から定款をお預かりし確認させて頂くと今後、会社を運営していくうえで不都合になるであろう内容の定款が数多くあります。
会社の【定款】とは「会社(法人)の憲法」と言われているものであり、
「会社を運営していく上でのルール」をまとめたとても重要なものです。
内容を良く理解したうえで、将来のことを考え、あらゆるケースを想定して作成しないと、後々不都合が起きてしまいます。
ですが、法律を全て理解して、更に自分の会社にあった内容の定款を作成するのは容易ではありません。
そこで司法書士法人トラストにご相談下さい!!
司法書士がヒアリングをしたうえで、その会社にあった定款をしっかりと考え作成し、検証致します。
トラブル解決よりもトラブル予防に時間と手間を割くことが、会社設立・運営においては重要となります。
トラブルが生じた場合の損害は計り知れませんし、結果的にコストをおさえられることになります。