本店所在地にビルの部屋番号を追加したい!?
先日、会社設立登記を少し前にお手続きさせて頂いたお客様より問い合わせがありました。
『本店移転』登記をお願いいたします!
設立登記の際、会社の本店所在場所(本店住所)は登記されますが、その際、最低限、町名地番までで良いとされており、ビル名(マンション名)と部屋番号まで入れるかどうかについては、任意とされています。
つまり、ビル名は登記しても、しなくてもよい、という取扱いになっています。
弊所では、本店所在地にビル名や部屋番号まで入れるかどうかは、きちんとお客様に確認させて頂いております。
お客様もその時は、部屋番号を入れずに登記したいというご希望でしたので、その様に手続きさせて頂きました。
しかしながら、手続き完了してからしばらく経ったころ、ビルのオーナーより、本店所在地に部屋番号を入れるよう指示されたそうです。
ビルのオーナーも同じビル内で事業をしており、『実際の部屋が違ったとしても、登記簿上の表記が同じでは困るから、きちんと部屋番号まで入れて欲しいとの事です。
本店所在地が一緒でも、別の会社ですし、同業種でもないので問題はないのですが、オーナーからその様に言われてしまっては、お客様も変えざるを得ない…となったのです。
通常、会社の住所を変更するときには、『本店移転』という登記を申請します。
その名のとおり、“本店を移転した”という登記になります。
ですが、今回のケースでは会社自体は全く移転していないのです。
その場合でも『本店移転』登記で申請できるのでしょうか?
それは『本店変更』登記という方法です!
『本店変更』登記とは、“移転”の事実がないけれども、住所の表記を変更したい時に行われます。
例えば、登記していたビル名が変更になったとき。
新潟市中央区××町1丁目1番1号 ABCビル
↓
新潟市中央区××町1丁目1番1号 〇△◇ビル
というように、ビルのオーナーが変わったことに伴い、ビルの名称を変更することがあります。
そんな時には、実際に“移転”しているわけではないけれども、【ABCビル】はすでに無いので変更しなくてはなりません。
そんな時に『本店変更』登記で変更する必要があります。
つまり、実体に応じて登記の原因も異なるという事になります。
他にも、建物の部屋番号まで入れていたが、先の事を考えて部屋番号を削除したいときなどにもこの登記事由で申請することが出来ます。
今回のお客様のケースでも、実際には“移転”しておらず、ビル名+部屋番号の表示のみを変更するだけですので、『本店変更』登記になります。
この『本店変更』登記ですが、よくあるようで実はあまり無い手続きのようです。
実際に“移転”していないのに、『本店移転』登記で登記申請してしまう事もあるようです。
今回は、事前に法務局へ照会をかけて、確認のうえ登記申請させて頂きました。
【必要書類】
・取締役の決定書(取締役会設置会社においては、取締役会議事録)
・委任状(代理人に依頼する場合のみ)
【申請書】
・登記の事由 本店変更
・登記すべき事項
「本店」~~~~1番1号〇〇ビル101
「原因年月日」令和 年 月 日変更
・添付書類 取締役の決定書(取締役会設置会社においては、取締役会議事録)1通
委任状 1通
・登録免許税 金3万円
このような感じで登記申請し、無事に補正等もなく手続完了しました。
※案件によって必要書類が変わったり、法務局によって取り扱いが多少変わることがあるそうなので、事前確認するのが望ましいでしょう。
今回、「部屋番号を追加で入れて欲しいので、『本店移転』登記をお願いいたします!」
というご依頼をいただきましたが、
何も考えずに『本店移転』登記を申請してしまうと補正もしくは取下げとなってしまいます。
会社の住所を変更するのには、一般のお客様でも手続が簡単に出来るようにみえますが、
このように実態が伴っているかなど、きちんと見分ける必要があります。
会社の登記は簡単に見えて、以外と奥が深いのです。