NPO法人の役員変更について
先日、NPO法人を運営されている方より複数のお手続きを頂きました。
NPO法人の数は株式会社に比べ少なく、弊所でも手続きの件数としては株式会社の手続きに比べて圧倒的に少ないです。
NPO法人の手続きは一年に何回もご依頼を頂く訳ではない為、ご依頼を頂くたび、重要なポイントを毎回確認しながら進めています。
今回は、NPO法人の手続きの中で多い役員変更について備忘録もかねて紹介します。
NPO法人とは、「特定非営利活動法人」と呼ばれ、株式会社と同じ法人の一種です。
平成7年1月に阪神・淡路大震災が発生し、市民ボランティアが復興に大きな力を発揮したことをきっかけに、市民活動団体が簡便に法人格を得られるよう、平成10年3月に「特定非営利活動促進法(NPO法)」が制定され、「NPO法人制度」がスタートしました。
NPO法人のNPOは
「Non-Profit Organization」又は
「Not-for-Profit Organization」の略称です。
『様々な社会貢献活動を行い、団体の構成員に対し、収益を分配することを目的としない団体』の総称で、株式会社とは異なり、利益を目的にしないという特徴を持ちます。
NPO法人には、役員として理事や監事を設置することとされており、特に理事が新しく就任した場合や辞任した場合や、役員任期満了後に同じ人がそのまま理事を継続する場合(重任)などには、その変更登記を法務局に申請しなければなりません。
株式会社の場合、役員として『取締役』と『監査役』がありますが、『取締役』の中から代表を選び、その者を『代表取締役』と定めます。
そして、『代表取締役』『取締役』『監査役』の全員を登記し、謄本には全員の氏名が掲載されます。
一方、NPO法人の役員には、『理事』と『監事』の2つがありますが、そのうち登記しなければならないのは、代表権を有する理事のみです。
NPO法人の理事は、法律上、それぞれが単独で法人を代表する権限を有することが原則とされています。
つまり、その定款において特に代表権を制限していない場合には、理事全員が代表権を有することになり、理事全員について住所と氏名を登記する必要があります。
逆をいえば、定款において代表権の制限を行っており、理事長(代表理事)のみが代表権を有すると定めている場合には、理事長である理事のみを登記すれば足ります。
(1)役員の任期が満了した場合
NPO法人の役員の任期は、法律で「2年を超えない範囲で法人の定款で定める」こととなっています。
したがって、どのNPO法人でも少なくとも2年に1回は役員の任期が満了します。
この際、代表権を有する理事が交替する場合だけでなく、たとえ再任する場合であっても、「再任という役員変更」が生じることから、法務局への役員変更登記が必要なことに注意する必要があります。
➀定款に定められた方法で新しい任期の役員を選任する
定款に記載されている役員の任期規定から、役員の任期満了日を確認します。
(※設立当初の役員の任期は、一般的に定款の附則に記載されています。)
仮に7月31日が、現在の役員の任期満了日であれば、8月1日から始まる任期の役員を、定款に定める方法で選任する必要があります。
例えば、定款で「役員は総会で選任する」と定められていれば、通常は新しい任期が始まる前までに総会で役員を選出します。
なお、任期満了にともなう役員改選の場合、定款に別段の定めがなければ、原則として現在の役員の任期満了日の翌日から新しい任期が始まることになります。
時々、定款に別段の定めがないにもかかわらず、役員改選の手続を行った日から新しい任期が始まるものだと誤解されるケースもありますが、違うため注意が必要です。
また、任期満了に伴う役員変更の登記の申請は新しい任期の開始日以降に行わなければならず、新しい任期が始まる前に登記を申請することはできません。
②代表権を付与する理事を選任する
定款で代表権を付与する理事の人数を制限している場合は、代表権を付与する理事を選任します。選任方法については定款の内容を確認する必要がありますが、一般的には理事の互選で選任することが多いと思われます。
注意しなければならないのは、例えば、任期満了から1ケ月ほど前の総会で予選により次期の理事を決め、総会の終結後、直ちに理事会を開いて代表理事を予選した場合、理事が全て再任するのであれば認められるのですが、理事の交替がある場合は、予選としては認められないということです。
これは、交替した理事の任期がまだ始まっておらず、理事会を開いても理事会として認められないことと、実際に理事に就任したときの発言等が代表理事の選任に影響が出ないとも言い切れないことからです。
理事全員が重任するのであれば、事実上そういった問題は起きないと思われることから、理事が全員重任する場合には、代表理事の予選も認められています。
つまり、代表理事を決める理事会については、その理事会を構成する理事が、その時点で理事としての資格があるのかに注意する必要があります。もし、理事の交替がある場合に、総会で次期の理事を選任し、総会の終結後、直ちに理事会を開いて代表理事を選任できるようにするためには、定款で任期の短縮伸長規定を定めておく必要があります。
なお、代表権を付与する理事を制限していない場合はこの手続は必要ではなく、理事全員を登記することになります。
(2)任期途中で役員に変更がある場合
① 役員の住所や氏名の変更があった場合
法務局に登記している役員に住所や氏名の変更があった場合、その変更登記が必要です。
②役員が退任する場合
法務局に登記している役員が、任期途中で『辞任』『資格喪失』『解任』『死亡』などにより退任する場合は変更登記が必要です。この際に、「辞任届」や「資格喪失を証する書面」「解任を証する書面」「死亡届」などの書類を添付します。
なお、それにより役員の員数等が定款の規定に満たない場合は、速やかに法務局に登記する役員を選任しなくてはなりません。
(3)任期途中に役員を追加する場合
定款に定められた方法で新しい任期の役員を選任し、任期途中に追加された理事が、そのまま代表権を有する場合や、互選などの定款に基づく方法で代表権を付与する場合には選任手続を経たうえで役員変更登記を行う必要があります。
(1)議事録の記載
役員を選任する総会には新しい任期の役員が全員出席し、役員選任の際に全員が就任する意思を明確に示す。これによって就任承諾書を省略できますが、議事録の記載には注意が必要です。
役員を選任する総会の議長または議事録署名人のいずれかに代表権を有する理事A(法務局に法人の印鑑を登録している理事)が就任します。
そして、議事録の役員選任の項目には、選任された役員全員の氏名(フルネーム)、新任・再任の別を記載と、全員がその場で就任を承諾した旨を明記し、議事録の記名押印欄の代表権を有する理事A(法務局に法人の印鑑を登録している理事)のところに法人の印鑑を押印する。これによって、A以外の役員が押印する印鑑は認印でよく、印鑑証明書も不要になります。
また、代表権を付与する理事の互選の場でも、選任された方が、その場で就任の意思を明確にし、記名押印欄のAのところに法人の印鑑を押印すれば、他の方が押印する印鑑は認印でよく、印鑑証明書も不要になります
なお、この方法が利用できるのは、代表権を有する理事が再任する場合と、代表権を有する理事が変わっても旧理事長がいわゆる平理事として残る場合に限られます。
したがって、代表権を有する理事が同時に理事も退任する場合は、原則どおり、議事録や互選書には押印者全員の実印と印鑑証明書が必要となります。
(2)任期途中に役員を追加する場合
また、前述のとおり、理事の交替がある場合には、あらかじめ代表理事を決めることができないため、次期の理事の任期開始日(現任の理事の任期満了日)以降に理事の互選または理事会を行う必要があります。
しかし、法人を運営するうえでは総会と理事の互選または理事会を同じ日に開催して代表理事を決めることが効率的だと言えるでしょう。
そのためには「定款に任期の短縮伸長規定を設ける」か「いったん理事全員が総会終結時で辞任する」の2通りの方法があります。
定款に伸長短縮規定を設ける場合の記載例は次のようになりますが、この規定を設けることができるのは
・役員を総会で選任することと定款で定めている法人に限られること
・これから定款変更をする場合には、所轄庁の認証を受ける必要があること
に注意が必要です。
<定款例>
第○条 役員の任期は、1(又は2)年とする。ただし、再任を妨げない。
2 前項の規定にかかわらず、任期満了前に、就任後1(又は2)事業年度が終了した後の総会において後任の役員が選任された場合には、当該総会が終結するまでを任期とし、また、任期満了後後任の役員が選任されていない場合には、任期の末日後最初の総会が終結するまでその任期を伸長する。
登記申請のために必要な書類の準備ができたら、法務局へ役員の就任もしくは重任(再任のこと)、または変更等の登記を申請します。
なお、定款で代表権の制限を行っており、理事長のみが代表権を有する場合でも「理事」の資格で登記を申請します。
株式会社などの法人が役員変更登記をする場合には登録免許税が必要ですが、NPO法人の登記に関して登録免許税は非課税となっています。
役員変更登記は、役員の変更日(就任日、辞任日など)から2週間以内に法務局へ申請しなければならず、登記を怠った場合には過料の制裁に処せられる可能性があります。
この過料ですが、一般的には2週間を経過してもすぐに過料なる訳ではありません。NPO法人においてもそこは変わらないのですが、注意点があります。
それは、NPO法人は県や市、内閣府といった所轄庁において情報が全て管理・公表されており、常に確認されている点にあります。
登記が終わった後にも報告義務があるのですが、ここで『なぜ2週間を過ぎてしまったのか』という指摘は入ってしまいます。
見られていなければ良い、という訳ではありませんが、行政はとても厳しく確認しているので、例え過料にかせられなくても、2週間以内に申請するようにしましょう。
NPO法人の役員に変更があった場合、登記を申請しますが、都道府県などの所轄庁にも届出を行う必要があります。
登記だけではなく、必ず所轄庁に届出等を行わなくてはならないため、忘れないよう注意しましょう。
変更の事由によって提出する書類が決まっていますが、共通して提出が必須なのは
①「役員変更等届出書」
②「変更後の役員名簿」の2種類です。
新任の役員がいる場合は
- 「新任の方の就任承諾書及び誓約書の写し」
- 「新任の方の住民票※(提出日より6カ月以内に取得したもの)」
も提出が必要となります。
※住民基本台帳ネットワークに接続している市町村に住民登録する方で、同ネットワークでの本人確認に同意する場合は、住所又は居所を証する書面(住民票等)の添付は不要となります。
NPO法人は、少なくとも2年に1度は役員変更の登記が必要になりますが、定款の規定によって手続の内容が変わるため、まずは定款の定めを確認する必要があります。
しかし、確認したあとの手続きは、株式会社の手続きに比べてとても煩雑となるため、なかなか自身でて手続きを行うには大変だと感じる方が多いでしょう。
・所轄庁への届出は済んでいるが、法務局でNPO法人の登記手続をすることを忘れていた
・定期的に自分たちで手続きしていたが、何度も補正のために法務局に行くはめになることが多く、煩わしいので専門家に頼みたい
・法務局やネットの説明を見ても、よく分からない
といった場合には、ぜひトラストにご相談ください。